新築マンションは販売業者のコストや利益が乗っていて割高だから中古マンションの方が良い。そんな記事を見たことがありませんか?
特に中古マンションを扱っている仲介業者が配信している記事の中に多い主張です(つまりポジショントークです)。
新築、中古どちらの購入経験もある私の結論は、新築だからといって不当に利益が乗せられているわけではなく、新築、中古にはそれぞれに魅力があるということです。
これから購入を検討しようとしている人は、入り口で排除せず、メリットデメリットを見極めてから決めても遅くはありません。
今回は新築、中古それぞれの特徴と、メリットデメリット、購入時に注意すべきことについて解説したいと思います。
【記事を書いた人】
ぴっちー
✔︎ 都市銀行で不動産担保評価実務経験10年以上
✔︎ 不動産売買契約は10回以上経験
✔︎ ファイナンシャル・プランニング技能士1級
1.新築マンションと中古マンションの違い
(1)それぞれの定義
①新築マンション
新築マンションは不動産業界ルール(※)において以下の2点の条件を満たすマンションと定められています。
・竣工してから1年未満であること
・未入居であること
②中古マンション
中古マンションとは以下2点のうちいずれか1点を満たすマンションです。
・竣工してから1年以上経過していること
・居住の用に供されたことがあること
(※)不動産公正取引協議会連合会:「不動産の表示に関する公正競争規約」
(2)売主の違い
①新築マンション
新築マンションは完成まで建物の登記が完了していませんが、建物の建設資金を拠出した企業や土地の権利を持つ企業が売り主となります。
一般にマンションデベロッパーと呼ばれ、相応の資金力と信用力が必要となるため、プレイヤーは大手企業が中心です。
②中古マンション
中古マンションの売主は不動産業者であることもあれば、不動産以外の事業会社であったり、個人であったりと様々です。
不動産業者であっても、新築マンションのように大手とは限らず、大小さまざまな企業規模のプレイヤーが存在します。
(3)法的な責任の違い
①新築マンション
新築マンションは「品確法」(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づいて引き渡しの日から10年間の瑕疵担保責任を負わなければならないことになっています。
この法律によって、住宅に隠れた瑕疵があった場合に、買主は売主に対して無償での修繕や損害賠償請求をすることができます。
また、売主によって独自のアフターサービスの基準を設けている場合もあります。
②中古マンション
中古マンションの場合は売主と買主の関係で決まります。今回は個人が買主と想定して解説します。
売主が宅建業者(プロ)の場合、宅建業法40条により瑕疵担保責任は引き渡しの日から2年以上と定められており、買主に不利な特約を結ぶことも無効となります。
売主が宅建業者以外の事業者(法人に限りません)であった場合、消費者契約法が適用されることになります。
消費者契約法は事業者と消費者の情報格差などから消費者が一方的に不利益を被ることから守る法律です。ここでは宅建業法とは別に、一般個人が一方的に不利にならないための法律がある、と理解してください。
売主が個人の場合は、売買契約の中で双方が自由に取り決めることになります。瑕疵担保責任について売主が負わない旨の契約とすることも可能です。
(4)値付けの違い
不動産市況からかけ離れた金額だと買い手がつきませんので、新築でも中古でも基本的にはその時々の不動産市況と周辺相場に基づいて出されるのが通常です。
ただし、売主側の事情や販売経緯によって値付けの仕方が異なります。
①新築マンション
簡単に言うと、プロジェクト全体のコストに利益を乗せて、プロジェクト全体の目標売上を区分1戸ごとに振り分けたものが新築マンションの販売価格です。
プロジェクト全体のコストには以下のようなものがあります。
・土地の取得費用
・建物の建築費
・販売活動費用(人件費、広告宣伝費、賃料など)
・金融コスト(借入金の利息など)
上記のコストに利益を乗せて、プロジェクト全体での目標売上高が設定されます。
そして、主に以下の条件をもとに、区分1戸ごとの販売価格が決められます。
・広さ
・間取り
・向き
・階数
最近では、販売を何期かに分けて、1期目の販売状況を見極めたうえで、2期目以降の価格を調整する販売手法も見受けられます。
②中古マンション
中古の場合は売主によって事情は大きく異なります。
売主が不動産業者の場合は、独自の情報網で安く仕入れ、そのまま利益を乗せて転売するケースや、リノベーションをして販売するケースなどがあります。
どちらのケースも仕入コストがはっきりしていますので、一つのプロジェクトとしてこの価格以上で販売したい、という新築マンションにやや近い事情が存在します。
売主が不動産業者以外の事業会社の場合は、マンションを事業で使わなくなった、決算との関係で損益を実現させたい、固定資産とそれに紐づく借入金をなくしてバランスシートを改善したい、など売却に関する事情は様々です。
価格は、本業ではないので、明確な金額の目標は持たず、周辺相場に比べて適正な価格で売却することが重視されます。
売主が個人の場合は、こちらも事情は様々です。住み替えのために自宅を売却するケースもあれば、相続で取得したマンションを売却したり、投資用マンションの出口として売却するケースもあります。
考え方も様々ですので、相場以上の売却にこだわる人もいれば、スピード感を優先して、価格にこだわらない人もいます。
(5)メリット・デメリット
①新築マンションのメリット
・売主側の法的責任が重いため、安心感がある
・新しい設備を使うことができる
・提携ローンが用意されることがある等、住宅ローンは手続き面や審査の面で有利になりやすい
・住宅ローン控除や固定資産税などの税制面での優遇が多い
②新築マンションのデメリット
・購入時には実際に物件を見られないケースが多い
・その時々で販売されているものが限られているため、時期によっては選択肢が少ない
・売主の営業マンから話を聞くことになるので、買主に寄り添った提案はしてもらいにくい
③中古マンションのメリット
・多くの場合、実際に部屋を見ることができる
・物件数が多く、選択肢が多い
・実際に物件が見れる
④中古マンションのデメリット
・売主の責任は契約に契約次第で、相対的にリスクは高い
・設備も中古なので、使用感があったり、経年劣化が見られる
・築年数によっては銀行の担保評価が低くなり、住宅ローンの審査で不利になりやすい
・築年数によっては住宅ローン控除が使えないなど、税制面の優遇が限られている
よく、新築マンションの方が設備が良い、という指摘を見かけますが、一般的には当てはまることが多いものの、必ずしも正しいとは言い切れません。
新築マンションは新品ではありますが設備のグレードには幅がありますし、中古マンションによっては分譲時の不動産市況などから、今の新築に劣らない豪華な設備を備えているものもあるからです。
また、新築マンションは業者の利益が乗っているために割高、という指摘がありますが、その指摘も必ずしも正しいとは言えません。
結果的に周辺の中古物件よりも高く販売されることが多いのは事実ですが、築年数で比較すれば新築が高くなるのは当然です。
前述した通り、値付けの仕方自体が違いますので、新築マンションの値付け部分だけ取り上げて、デベロッパーの利益が乗っている新築マンションは割高、と考えるのはやや極端な考え方かと思います。
2.検討時の注意点
(1)新築マンション
①価値見極めのポイント
新築マンションの検討時に最も注意しなければならないのは、営業マンは新築マンションを販売する役割であって、我々が良い選択をするための助言をしてくれる役割ではない、ということです。
もちろん、営業マンの方は我々のために様々な観点から提案やアドバイスをしてくれますし、有用なこともたくさんあります。
それは販売する目的の中で付加価値として行われていることで、あくまで営業マンの目標は「販売すること」です。
仮に我々のニーズに全く合わない物件であったとしても、買わない方が良い、と助言してくれることは稀です。
過度に警戒する必要はありませんが、客観的な立場ではない、ということは念頭に置きましょう。
価値の見極めにおいて気をつけるポイントは販売手法についてです。
新築マンションを販売する大手デベロッパーは長年新築マンションを販売してきた経験から、我々消費者の心を揺さぶる宣伝文句や営業トークを持っています。
コンセプトムービーやパンフレットには楽しい生活をイメージさせる売り文句がたくさん記載されています。
その物件ならではの特徴もありますが、中にはその物件である必要のない特徴もたくさん盛り込まれています。
週末は近くの公園でバーベキュー、と書かれていたらなんだか楽しそうですが、その地域に住めば必ずしもその物件を選ばなくても実現できることです。
余計な情報や雑音がある中で、その物件ならではの価値を見極めることが重要です。
特に新築マンションは買って中古になった瞬間に価値が下がる、という話をよく耳にします。
これはごくごく単純な話で、新築だから高かったわけではなく、もともとその物件には売主が値付けした価値がなかった、というだけです。
新築にしても中古にしても、今の周辺相場と比較して割高ではないかを見極めることが重要です。
新築マンションの検討においても、中古マンションで同じような条件の物件が、どのくらいの価格で売りに出されているかをよく確認するようにしましょう。
②交渉のポイント
新築マンションの場合は売主が価格を設定して販売しています。
抽選が発生するような人気マンションの場合は買い手がたくさんいるので、売主が有利となります。基本的にはその価格で購入するか否か、という選択肢しかありません。
抽選が発生する物件はその価格なら欲しい、と考えている人がたくさんいるということですので、購入後も価値を保ちやすい物件と考えて良いと思います。
抽選がない物件だからと言って魅力がない物件とは限りません。
立地や間取りなど様々な要素がある中で、あらゆる条件が満たされていれば、その分価格も高くなります。自分には必要の無い機能はむしろない方が、その分安く済むはずです。
万人受けはしないけれど、自分の希望にあった物件があればそれこそが魅力のある物件と言えるのではないでしょうか。
もしそんな物件を見つけたら、自分なりの妥当な価格を設定したうえで、価格交渉をしてみましょう。
大事なのは交渉する段階においては、明確な判断基準と自分の意志を固めておくことです。
例えば客観的に見ると4,000万円の市場価値だけど、4,500万円で販売している。
そんな時に4,000万円まで値下げしてくれれば買うのか、自分の好みにぴったりだから4,200万円なら買うのか、もしくは結果値下げがなくても4,500万円で買うのか。
明確な判断基準がないと交渉していても自分自身に迷いが出て、迫力のある交渉が出来ません。
少しでも希望価格と外れていたら購入しない、という強い意志がないと結果的に足元を見られて高値掴みに繋がってしまいます。
仮に、その時は交渉が決裂しても、時間が経って売主側の事情が変化し、値下げに応じてくれる場合もあります。
ちなみに値下げに応じてもらいやすいのは売主側に売り急ぐ事情がある時です。
新築マンションにおける、値下げに応じてもらいやすい状況を記載します。
a.既に竣工して他の部屋は引き渡しが住んでいる物件
あまりに販売活動が長期化すれば人件費や広告宣伝費などの費用がかさんでいきますので、売主側は多少の値引きに応じてでも早めに販売する、という考え方になりやすいです。
特に竣工後は管理費や修繕積立金といった共用部の維持費の負担もついて回りますので、その傾向は強くなります。
b.決算期が近い物件
どの事業者でもそうですが、特に不動産会社は年度決算の数字にこだわります。
1年間の損益という意味で売上高や利益を気にするのはもちろんですし、バランスシート上も重要です。
決算期に棚卸資産が多いと、バランスシートにおける健全性や収益性の面で金融機関や投資家から評価されにくくなります。
そのため、不動産会社によっては、在庫である新築マンションは極力決算期をまたがないように売り切りたい、という意向が働きます。
特に企業規模が小さくなってくると、資金繰りが課題になりやすいため、決算期を狙った値引き交渉はしやすくなります。
③その他の注意点
第1期、第2期などと分けて販売されている場合は人気の部屋から売り出されることが多いため、決断が遅いと希望の間取りがなくなってしまうことがあります。
申込をしても抽選が外れて購入できないケースもあります。外れたら次期の販売では価格があげられていた、という話も少なくありません。
また先着順であれば、人気の間取りから無くなっていきます。
人気物件ほど、購入できないリスクも考えて検討する必要があります。
(2)中古マンション
①価値見極めのポイント
新築マンションは営業マンは売主の人なので客観的な立場ではない、とお伝えしました。
中古マンションの場合は主に2つのパターンがあります。
1つ目は、新築マンションと同じように売主と直接売買をするパターンです。
この場合は仲介業者が必要ないので、仲介手数料を払う必要がない代わりに、新築と同じ「営業マンが客観的な立場ではない」という注意点が発生します。
2つ目は、売買にあたり、仲介業者に入ってもらうパターンです。
仲介業者は買主のために物件を探したり、条件交渉をしてくれますが、仲介手数料を支払う必要があります。
通常、中古マンションの購入は仲介業者を入れることが多いです。
仲介業者は買主のために物件を探してくれますので、買主の希望を踏まえて、客観的な提案をしてくれます。
ただし、売買が成立して初めて手数料が発生する、という事情から、決断を急かしたりする、買主のことをきちんと考えてくれない仲介業者が存在するのも事実です。
中古マンションは間取りや築年数といった表に出ている部分だけではなく、管理体制や修繕計画など確認すべき点がたくさんあります。
高い買い物をするうえで、信頼できる仲介業者と担当者を見つけることが何よりも大切です。
信頼できる仲介業者さえ見つかれば、あとは探すだけです。
今はSUUMOなどの不動産情報サイトを見れば、素人でも簡単に情報収集ができるようになりました。
出ている物件の価格、立地、間取り、専有面積、築年数などを確認すれば、売主はこのくらいで売りたいんだな、というおおよその相場感はつかめるはずです。
実際には成約価格はそれ以下ということになりますし、極端に高い値付けで販売されている物件もありますが、とにかくたくさん見て慣れるのが一番です。
②交渉のポイント
売主がどんな相手か、どんな値付けの仕方が行われているかは既に話をしました。
売主それぞれに物件を売却する事情を抱えています。中には売り急ぎの事情を抱えている売主もいるかもしれません。
新築マンションにおける、値下げに応じてもらいやすい状況を記載します。
a.売主が不動産業者の場合は仕入から1年以内が区切り
売主が不動産業者の場合は、プロジェクトに関する借入があるかどうか、いつ借入をしたか、が重要です。
それらは不動産の登記簿謄本で確認ができます。不動産の仕入と同時に抵当権が設定されていれば、金融機関からの借入による資金で不動産を仕入れている、ということです。
このような場合、金融機関は貸出期間1年の期限一括返済、という条件とするのが一般的です。
つまり、不動産業者は仕入をしてから1年以内に返済しなければならないということです。
そのような背景から、仕入から1年近く経っている場合は、売り急いでいるために価格交渉ができる可能性があります。
b.事業会社は資金繰りや決算が関係している可能性がある
売主が不動産業者ではない事業会社の場合は、先ほど触れたように事情は様々ですので、把握するのは簡単なことではありません。
一つの着眼点としては、売主がやりとりの中で決済日にこだわっているような場合は、その日までに資金が必要であったり、会計処理を確定させたい事情がある、ということです。
そのようなケースでは、スケジュールを売主の希望に合わせる代わりに、金額を下げてもらう等の交渉を行うのが良いでしょう。
c.個人は買い替えに伴う売却が多い
売主が個人の場合は、住宅の買い替えというケースがあります。
この場合、新しい住宅を購入するのに通常は住宅ローンを組むことになります。
売却する不動産でも住宅ローンを組んでいる場合は、速やかな返済を求められることから、売主側の売却スケジュールに余裕がなく、価格交渉に応じてもらえる可能性が高くなります。
③その他の注意点
中古物件も新築物件と同じく、機を逃すと購入することができなくなります。
特に、新築の場合は販売スケジュールが決まっていますが、中古はある日突然なくなります。
不動産は基本的に同じものはありませんので、いざという時にすぐに決断できるように、日頃から準備しておくことが重要です。
3.まとめ
いかがだったでしょうか。新築マンション、中古マンションに関わらず、大事なことは本質的な価値を見極めることです。
そのために不動産のプロでない私たちに出来ることは、信頼できるプロを探すことと、あらかじめ検討時の注意点を押さえておくこと、少しでも情報を集めておくことです。
決して安い買い物ではありませんので、後悔しないように最善を尽くしましょう。
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