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駅近の資産価値はなぜ高い?「希少性」から考える価値の高い物件とは

住まい

電車で通勤する人にとって、家を探す時にまず気になるのは家から駅までの距離ですよね。

駅から近い方が便利だけど、その分お値段も高いからどこで折り合いをつけようか悩んでいる。そんな人も多いと思います。

特に買うとなると、多少無理をして駅近にするか、少し予算を抑えて駅から遠いところにするか、悩ましいところです。

そこで今回は「希少性」という観点から駅近物件の価値について考察します。実例もお出しして、資産性が保たれる要因も解説したいと思います。

不動産は「資産」という観点で考えることもとても大事ですので、是非参考にしてください。

【記事を書いた人】

ぴっちー
✔︎ 都市銀行で不動産担保評価実務経験10年以上
✔︎ 不動産売買契約は10回以上経験
✔︎ ファイナンシャル・プランニング技能士1級

1.駅近とは

(1)駅近の定義

そもそも「駅近」とは何でしょうか?調べてみると駅近に明確な定義はありません

一般的には、駅から徒歩5分以内であれば駅近物件として紹介されることが多いようです。

(2)徒歩○分の定義

不動産の表記で徒歩○分などと記載されているのをよく見かけます。この表記は、事業者の違いによる表記揺れを防ぐために、業界ルール(※)で定義が定められています。

徒歩1分=道路距離で80m以内

(※)不動産公正取引協議会連合会:「不動産の表示に関する公正競争規約」

道路距離とは道路に沿って歩いた場合に80m以内で着く、ということで、駅と不動産が直線距離で80m離れている、ということではありません。

ただし、実際には道路に登り下りがあったり、信号があったりしますので、単純な道路距離は80m以内でも、必ずしも1分以内に到着するとは限りません。

そのような事情があっても表記上は徒歩1分となりますので、実際に現地で確認したり、googleのストリートビューなどで確認する必要があります。

また、距離は駅や不動産の出入り口を起点にしますので、駅の出入り口に入ってからホームまでの距離は含まれません。

出入り口に着いてからの距離が長かった、という場合も考えられますので、こちらも注意が必要です。

2.駅近物件の希少性とは?

(1)徒歩1分と徒歩10分の比較

徒歩1分と言った場合は道路距離であることを解説しました。

ここでは、不動産の表記のルールとはやや外れますが、直線距離で徒歩1分(80m)の物件と、徒歩10分(800m)の物件を比較して、駅近物件の希少性がどの程度なのか解説いたします。

・徒歩1分の面積:80m×80m×3.14=2万㎡

・徒歩10分の面積:800m×800m×3.14=200万㎡

(小学生の算数レベルです)

簡単な計算でしたが、いかがでしょうか。

(直線距離で)徒歩1分圏内の面積は、徒歩10分圏内の面積の1/100しかありません。

仮に地域に満遍なく家が立っていた場合、徒歩10分圏内が100件あるのに対し、徒歩1分圏内には1件しかない、ということです。

実際には、大きな商業施設があって、そもそも1分圏内にほとんど居住用の建物がなかったり、逆に駅直結の大規模なマンションを立てて便利な場所に住居を集中させていたりと、様々なケースがありますので、必ずしもその割合になるとは限りません。

住宅情報サイトSUUMO(2023年8月9日現在)で調べたところ、東京23区内で売り出し中の中古マンション物件数は徒歩1分以内が967件、徒歩10分以内が19,238件でした。

理論上の1/100ということにはなりませんでしたが、それでも徒歩1分以内は徒歩10分以内と比べると1/20程度しかないという結果でした。

駅近物件の希少性がどの程度かは、お分かりいただけたと思います。

(2)駅近物件の資産価値

希少性が高いことは資産性にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

実際に駅徒歩1分の物件事例を見て検証してみたいと思います。

①キャピタルゲートプレイス・ザ・タワー

キャピタルゲートプレイス・ザ・タワー
キャピタルゲートプレイス・ザ・タワー

三井不動産レジデンシャル、野村不動産が2015年に分譲した月島駅直結(徒歩1分)のタワーマンションです。

マンションの新築分譲時は坪単価340万円程度だったものが、現在の相場は坪単価600〜700万円となり、分譲時のほぼ2倍の価格で取引されています。

これは単に駅近ということだけが要因ではありません。この期間で東京全体の不動産の価格が上がっていますし、その中でも湾岸エリアの価値が大きく上がっていることが大きな要因としてあげられます。

そこで同時期に同じエリアで分譲されたマンションと比較をしてみたいと思います。

2014年にジオ勝どきという月島駅徒歩11分、勝どき駅から3分のマンションが分譲されています。このマンションは分譲時坪単価280万円程度から現在の相場は400〜450万円くらいと1.5倍になっています。

こちらのマンションもかなり価格が上がっていますが、キャピタルゲートプレイス・ザ・タワーと比べるとやや落ち着いています。分譲から10年近く経ったところで、価格上昇率に差がついていることが分かります。

あくまで一つの事例ですが、駅直結の物件であることから希少性が高く、資産性が保たれやすいということもあります。

またキャピタルゲートプレイス・ザ・タワーが大規模なタワーマンションということで地域のランドマーク的存在になっていることも、高い資産価値を維持しているポイントと言えます。

②パークタワー勝どきミッド

パークタワー勝どきミッド(右側)とサウス(左側)
パークタワー勝どきミッド(右側)とサウス(左側)

同じ湾岸エリアで月島駅のとなりの駅、勝どき駅でも、三井不動産が駅直結(表記上は徒歩1分)のタワーマンション「パークタワー勝どきミッド」を分譲しています。

こちらは2023年8月現在まだ引き渡しがされておらず、販売中の物件になりますが、2020年の販売開始当初から人気が高く、大きな話題になりました。

販売が進むにつれて価格を上げているようですが、それでも販売は順調に進んでいるようです。

不動産情報サイトを見ると、まだ引き渡し前にも関わらず、分譲価格の1.3倍から2倍くらいの価格で中古物件として売りに出されているのが確認できます。

成約価格ではないので、まだ落ち着いた価格とは言えませんが、多くの住戸が既に値上がりしている、ということほぼ間違いない状況です。

こちらのケースもキャピタルゲートプレイス・ザ・タワーと同じ要因と考えられます。

③考察

希少性の高い物件は、どのように資産価値に繋がっているのでしょうか。

不動産取引における価格はその時々の不動産市況をベースに、基本的に需要(買い手サイド)と供給(売り手サイド)の関係によって決まります。

市況だけは簡単には読めませんし、こちらでコントロールできるものでは無いので、需要と供給に限ってお話しします。

需要:駅近は多くの人がプラス材料として考えているので、駅から徒歩1分のマンションは購入したい人が多く、需要が多い

供給:駅近になればなるほど絶対的な戸数が限られているため、供給量が少ない

当たり前の話ですが、需要が多い一方で供給が少ないため、売り手が有利となり、売買価格が高くなります。結果として資産性が保たれる、というわけです。

3.駅近以外で希少性の高い物件とは?

駅近物件は以下のような特徴で資産性を保っていました。

需要:多くの人にとってプラス材料として考えていれば、需要は多い

供給:絶対的に数が少なければ、必然的に供給量は少ない

このような考察を踏まえると、以上の条件を満たすものは「駅近」に限らず高い資産価値を維持しやすそうです。

条件の一例をご紹介します。

(1)立地条件が特殊

①生活利便施設が近い

アーバンドッグ パークシティ豊洲(手前)とららぽーと豊洲(奥)
アーバンドッグ パークシティ豊洲(手前)とららぽーと豊洲(奥)

時々、商業施設の開発と同時に建設されるマンションがあります。

例えば、「アーバンドック パークシティ豊洲」はららぽーと豊洲に直結している、という他に無い強みがあることから、2008年の分譲から15年以上たった今も、非常に高い価格で取引されている人気物件です。

同様に、大型のスーパーマーケットが1階に入っている、隣接しているなどの特徴も資産価値の維持に貢献しそうです。

②ウォーターフロント

勝どき月島エリアのタワーマンション群(竹芝から撮影)
勝どき月島エリアのタワーマンション群(竹芝から撮影)

バルコニーが海や川に面している、というマンションも供給量が限られるという意味では希少性が高いです。

ただし、水災や匂いなどを気にして敬遠する人もいますので、需要がどれだけあるか、資産維持をどれだけ高く保てるかは、それ以外の要因に頼る部分も出てきそうです。

(2)部屋条件が特殊

①ルーフバルコニーがついている

ルーフバルコニーからの眺望(目黒区内)
ルーフバルコニーからの眺望(目黒区内)

マンションでルーフバルコニーがついている物件は非常にまれです。設計上、同じマンションの中でルーフバルコニーをつけられる部屋は限られていますし、そもそも多くのマンションではついていません。

それくらい一般的ではない条件なので、どうしても欲しい、という人は少ないかもしれません。

ただ供給が極めて限られていますので、広さや形状にもよりますが、資産価値の維持に貢献してくれる条件と言えるでしょう。

②眺望に優れている

夜景眺望イメージ(ワイキキで撮影)
夜景眺望イメージ(ワイキキで撮影)

タワーマンションでは部屋からの眺望が重視されるため、特定の方角の間取りや、一定の階数以上の部屋にプレミアムがつくケースがあります。

例えば「東京タワーが見える」「レインボーブリッジが見える」といった条件を満たす部屋は供給量が少ないため、資産価値に貢献してくれるはずです。

一つ注意したいのは、眺望は変わる可能性があるということです。眺望に影響する建物の建築予定がないか、今後再開発されそうな土地はないか、については調査や見極めが重要です。

③その他

一般的に「角部屋」「最上階」なども人気が高い条件の一つです。

供給数が極めて少ないというほどではありませんが、需要も底堅いので、他の部屋と比べて高い価格になりやすいです。

4.まとめ

いかがだったでしょうか。

不動産は必ずしも資産性だけで価値を判断するものではございません。

見るにあたっては様々な視点がありますが、希少性と資産性、という物差しで見ていただくことで、一つの検討材料にはなるかと思います。参考にしていただければ幸いです。

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