今回は東京23区の中で、「全人口における15歳未満の割合」が高い地域をランキング形式でご紹介します。
子どもの多い区が、すなわち子育てしやすい区とは限りませんが、ランキング上位の区には人気が出るに値する理由がありましたので、子育て環境の良し悪しを測る指標の一つとして参考にしていただければと思います。
ちなみに東京23区全体の平均は10.4%となっていて、日本全体の平均11.5%と比較してやや低くなっています。そのあたりの平均値も頭に入れながらご覧ください。
〈統計データ〉
データ取得元:東京都総務局統計部
データ基準日:2023年1月1日時点
1.1位〜10位
1位 千代田区 13.3%
1位は意外にも千代田区です。千代田区はオフィス街が中心で、住宅というと番町と呼ばれるお屋敷街など、ごく限られたエリアにしかありません。
あまり小さい子どもを持つ世帯がたくさんいるイメージはありませんが、なぜ子どもの割合が多いのでしょうか。
理由の一つとして考えられるのは、子育て支援が充実しているという点です。千代田区は税収が多く、財政的に余裕があることから、独自の子育て支援策を多く打ち出しています。実際に子育て関連の支出は他の区に比べてもかなり多いようです。
もう一つの理由としては、名門小学校の存在です。土地柄、士業や政府機関の関係者、経営者など、日本を代表するトップレベルの頭脳を持つ人たちが多く住んでいるため、子どもの平均学力も総じて高く、当然小学校の学力レベルも高いです。
そんな中でも「番町小学校」や「麹町小学校」は名門の公立小学校として知られていて、教育熱心な親の中にはそのような名門小学校の学区に入るために千代田区に転入する、という人もいるくらいです。
また、治安の良さや、オフィス街と近いために働き盛りの子育て世帯にとって仕事と子育てを両立しやすいという立地的な特性も理由の一つにあると思います。
2位 中央区 13.2%
2位は中央区です。中央区はオフィスの割合が非常に高いですが、近年では月島や勝どき、日本橋といったエリアにタワーマンションが次々と建設されていて、働き盛り世代の人口流入が続いています。
交通アクセスの良い中央区はマンション需要が高く、今後も湾岸エリアを中心に多くの再開発案件が計画されています。今後もしばらく子育て世代の流入がありそうです。
3位 港区 12.7%
3位は港区です。港区も中央区と同様、湾岸エリアを中心にタワーマンションが多く建設されていて、ファミリー層の流入が多いことが一因として考えられます。
いわゆる「セレブの街」である港区には、インターナショナルスクールや慶應義塾幼稚舎など名門私立小学校があり、高所得者層の人たちが子育てする街として選んでいることも子どもが多い理由の一つにありそうです。
4位 文京区 11.7%
4位は文京区です。「文教地区」として知られている文京区は大学や出版関連の会社が多いことが特徴です。そのような土地柄、公立小学校のレベルも高いと言われていて、教育環境が優れていることが人気の背景にありそうです。
中でも本駒込や小石川エリアは名門公立小学校「3S1K」と言われる誠之小学校、昭和小学校、千駄木小学校、窪町小学校の学区であり、特に子育て世代に人気のある地域となっています。
5位 江東区 11.7%
5位は江東区です。豊洲や有明をはじめとして再開発が進んでいるエリアとなっていて、比較的築年数の浅いタワーマンションが多いことから、子育て世代の流入が多くなっています。
公園や大型商業施設など、ファミリーにとって使い勝手の良い施設が多いことも人気の理由の一つと言えそうです。
6位 江戸川区 11.3%
6位は江戸川区です。葛西臨海公園をはじめ、たくさんの公園があり、豊かな自然環境が魅力です。
都心のベッドタウンとして、ファミリーで暮らせるような間取りにゆとりのある物件が多いことや、比較的物価が安いことなども、子どもが多い理由の一つと言えそうです。
7位 練馬区 11.2%
7位は練馬区です。都心や副都心のベッドタウンとして人気の街で、23区の中では都心からやや離れている分、広々とした土地も多く、ファミリーで暮らせる物件が多くなっています。
区全体が武蔵野台地に位置していることから地盤が強く、治安が良いことも安心材料となっています。
8位 世田谷区 11.2%
8位の世田谷区は第一種低層住居専用地域の割合が多く、低層住宅が広がる閑静な住宅街として人気が高い地域です。駒沢公園や砧公園をはじめとして公園が多いことや、子どもに悪影響がありそうな嫌悪施設が少ないことも安心材料です。
9位 品川区 11.1%
9位は品川区です。中央区や港区と同様、マンションの分譲が比較的多い地域なので、若い人の流入が多いことが一因です。
東側と西側で雰囲気がかなり変わりますが、住宅地や商業、オフィスが混在している地域なので、自宅から職場までの距離が近く、買い物にも不自由しないため、子育てと仕事を両立しやすいというメリットがあります。
10位 葛飾区 10.7%
10位の葛飾区は昔ながらの下町で、もともとファミリーで住んでいる人が多いエリアです。23区内で最も面積の広い水元公園や、江戸川をはじめとした河川など、都心部には無い自然環境が魅力です。子育て支援においても葛飾区は独自の施策に力を入れていて、調査では「子育てしやすい街」として名前があがることも多いです。
2.11位〜20位
11位 目黒区 10.7%
11位は目黒区です。11位までが23区の平均値(10.4%)以上ということになります。
目黒区は高級住宅街の中にある「東山小学校」が名門小学校として知られていて、東山小学校の学区は子育て世代に人気が高いエリアとなっています。所得水準の高い人が多く住んでいるため、学校の学力レベルも必然的に高く、教育環境として優れていると言えそうです。
12位 荒川区 10.3%
12位は荒川区です。ここから23区の平均値(10.4%)を下回ってきます。荒川区は都心3区への距離が近く、通勤利便性の高いエリアです。昔ながらの下町で、平均年齢の高い街ではありますが、日暮里や南千住などに比較的新しいマンションも建っていて、子育て世代の流入もそれなりにあるようです。
13位 足立区 10.1%
13位は足立区です。足立区も荒川区と同様に昔ながらの東京下町です。平均年齢は46.6歳と23区で最も高い一方で、子どもの割合は13位とそれほど低くはありません。
足立区は大学の誘致など、再開発に積極的に取り組んでいて、以前よりも街のイメージが良くなってきました。
北千住など、再開発が進んでいる街を中心に、若い世代の流入があるものと思われます。
14位 杉並区 10.1%
14位は杉並区です。杉並区は閑静な住宅街が多く、子育て環境としては決して悪くありませんし、街全体としてはむしろ優れていると思います。
ただ、街の中心地である高円寺や阿佐ヶ谷などは、単身向けの住宅が多く、その周辺は子育て世代よりももっと若い世代の人が多いために、子どもの割合は少し押し下げられていると思われます。
15位 大田区 10.1%
15位は田園調布や山王など伝統的な高級住宅街がある大田区です。1世帯あたりの人数が多く、平均年齢も高いことから、年齢層の高いファミリーが多く住んでいることが伺えます。
子どもの割合が平均よりも低いのは、大規模マンションの分譲が比較的少なく、人の入れ替わりがあまり多くないことが要因と考えられます。
住環境としては素晴らしい場所が多く、子育てするうえで大きなデメリットがあるエリアではないと思います。
16位 板橋区 9.8%
16位は板橋区です。子どもの割合が少ない一方で、65歳以上の割合は22.4%で4位となっていて、高齢化が顕著な街となっています。
高島平団地など、昭和時代に大規模分譲したマンションに長く住んでいる人が多いことが要因の一つと考えられます。
若い世代の流入は比較的少ないですが、庶民的でのんびりした雰囲気ですし、子どもを遊ばせる公園も多いので、子育て環境としては決して悪くないです。
17位 北区 9.8%
17位は北区です。65歳以上の割合は23.8%で3位となっていて、板橋区と同様に高齢化が進んだ街となっています。
都営住宅などが多く、古くから住んでいる高齢者が多いことが要因と考えられます。比較的物価が安く、都心へのアクセスに優れていることから、子育てと仕事の両立という面でメリットがあるエリアです。
一方で飲み屋街やパチンコ店、風俗店などが目立つ地域でもあるので、そのあたりはデメリットとして考えた方が良さそうです。
18位 墨田区 9.7%
18位は墨田区です。都心に近い立地で職場にアクセスしやすいため、子育てと仕事の両立という面でメリットがあります。
物価が安く生活しやすいですが、あまり緑が多い地域ではないですし、子どもを遊ばせる環境としては物足りないと感じる人もいると思います。
住まいとしては子育て世帯よりも、単身世帯やDINKSに選ばれている地域です。
19位 渋谷区 9.6%
19位は渋谷区です。オフィスと商業が混在するエリアで、単身世帯が非常に多いことから、子どもが少ない一方で65歳以上の割合も低く(17.5%で23区中20位)、子どもも高齢者も少ない、という年齢構成になっています。
地域によって雰囲気は異なるものの、渋谷駅周辺をはじめ、治安の悪いエリアもあるので、その点はデメリットと言えます。
20位 中野区 8.5%
20位は中野区です。中野区は新宿をはじめとした副都心エリアのベッドタウンとして人気があり、単身世帯が多く住む街です。
住みやすい街ではありますが、新宿区の治安に引っ張られる部分がありますので、治安の面は注意が必要です。公園が少なく、自然環境という面でも他地域に比べてやや見劣りします。
3.21位〜23位
21位 豊島区 8.2%
21位は豊島区です。池袋駅を中心に栄えていて、1世帯あたりの人数は23区中21位と単身世帯の多い街となっています。人口密度は23区中1位、外国人の割合は23区中2位で、たくさんの人が密集した、多様性のある街といえます。
池袋駅周辺を中心に、歓楽街が点在していて、犯罪認知件数も多いので、治安の面では不安があります。
商業は非常に充実していて、生活利便性の高さは大きなメリットです。
22位 新宿区 8.0%
22位は新宿区です。新宿区は1世帯あたりの人数が23区中最下位と、単身世帯の多い街となっています。
特に新宿駅周辺は買い物客や遊びにくる人、遠方からの旅行者も含めて、どこも混雑しているので、ベビーカーを押して歩いたり、お店に入るだけでも苦労する、といったことがあります。また、歌舞伎町など、治安の悪い街が多いことも不安要素です。
一方で、商業の充実ぶりは23区でも随一で、生活利便性の高さや、通勤利便性は大きなメリットと言えます。
23位 台東区 7.8%
最下位は台東区となりました。台東区は1世帯あたりの人数が23区中19位と非常に少なく、単身世帯が多い地域となっています。
都心部に近く通勤利便性が高いことや、商業や文化的施設が充実している点はプラス材料ですが、パチンコ店や風俗店、ラブホテルなど、子育てにおいては避けたい施設が点在しているのが気になるところです。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。都心3区と呼ばれる千代田区・中央区・港区がそのまま上位3区だったのはやや意外でしたが、子どもの割合が高い地域にはそれなりの理由があり、低い地域にも低いなりの理由がありそうでした。
ただし、子どもが多いから良い、少ないから悪いということではありません。地域によってそれぞれの良さがありますので、子育てを考えた時のメリットとデメリットをしっかり押さえて、住まい探しの参考にしてみてください。
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